じわと裂けた皮膚から血が滲み、朱珠は重力へ従い流れ落ちた。
目、頬、口端、顎を伝い、雫となってアスファルトへと吸い込まれる。
は人差し指で口の端に付いた血を掬い取り、
ちろりと赤い舌を覗かせてその血を舐め取った。

たったそれだけの動作がひどく優雅に見えるのは何故だろう。



「まずい」



微笑み、は雲雀から手を離した。
どしゃ、と雲雀は地面に叩きつけられる。
雲雀は身体のいたる所が軋み、激しく痛んだ。
荒い呼吸を繰り返せば、生臭い血の匂いが鼻腔を刺激し
唾液と共に喉へと流れ込む。



「すごいね、あそこで反撃が来るなんて予想外だった」



そんな世辞じみた賞讃なんかいらない。
にとって雲雀の反撃は予想外ではあったが、避けれない事はなかったはずだ。
雲雀もの腕を直に感じ、そのことを良く分かっていた。

嘘なんかつくな、素直に言え。
これ以上惨めにするな、情けをかけるな。

息が苦しい。
呼吸するので精一杯で、声が出せない。
声が出せたら、嘘つき、と盛大に言ってやるのに。



「頑張ったご褒美。病院まで連れてってあげるよ」



瞼がひどく重い。
ただでさえ歪んでいる景色にちかちかと何かが光る。



「 Un individuo sciocco. Ma non sgradevole. 」



聞こえた言葉は日本語か外国語か。
それさえも判断できないまま、雲雀の意識は暗転した。
嫌な夢を見そうだ。
それとも、夢を見ないほど深く眠るか。







馬鹿な奴。でも、嫌いじゃないよ。
2006 03 28
  

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