お子さま行進曲



、おしろにもどらなきゃ」


ふと顔をあげた子供は、突然扉の方へ歩き出した。
隊長の一人、マルコがそれを阻む。
子供はなに?とマルコを見上げた。


「どこへ行くんだよい」

「おしろにかえるの。あんましおそくなると、またおさにおこられる」


さも当然と言わんばかりに、マルコを押しどけて子供は進もうとする。
それを許すマルコではない。
現在このモビー・ディック号には多くの船員がいて、自分はその一部を預かる役を担っている。
子供といえど、得体の知れない不審者を好き勝手させるわけには、部下を危険にさらすわけにはいかないのだ。
確かに外見上は普通の子供でも、空から落ちてくるという怪しい登場をした。
人畜無害そうな顔をして、オヤジの命を狙ってきた刺客かもしれない。
例えマルコの膝以下の体躯しかなくても、どんな能力を隠し持っているかわかったものじゃない。
悪魔の実の能力、それ以外の力、他にも可能性を考えだしたらきりがない。
そんな危険な輩を自由に船内を歩かせてたまるものか。
他の二人の隊長はまだ思案顔だが、マルコはどんな危険因子も見逃す気はない。
見上げてくる子供は、本当に子供なのだろうか。


「とおれないよ?どいて?」

「ダメだよい。お前、ホントのことを言えよ」

「どいて。、おしろにかえるの」

「どこにある城に、何を持って帰るんだよい」

「おーしゅーのおしろに、はかえるの」


じわじわと、冷たい空気がマルコから染み出す。
先ほどから腹の中で溜まっていた子供への苛立ちがあふれ出している。
子供は意味のわからないことばかり言う。
要領を得ず、自分の言いたいことばかり。
もどかしさとジレンマで意思疎通が不可能なのではないかと思った。
いや、もう無理だ。
子供とは言葉の通じないまったく別の生き物だ。


「どいて」

「どくかよい」


二人のやり取りをオヤジは止めない。
ならば、したいようにしていいのだろう。


「どいてっ!、おしろにかえるのっ!!」






   
2010/09/16