お子さま行進曲



その子供を見たとき、懐かしさを感じた。
己の膝程度しかない小さな体躯、微かに感じ取れる怯えを含んだ目、海賊へ身を置く子供という時点でどうしても重ねてしまう。
一番隊隊長の足元に隠れ、ちらちらとこちらをうかがっている。


「ほれ、挨拶しろぃ」

「…!…だよ!」

「ジンベエじゃ、よろしゅうの」


一番隊隊長の足に隠れながらもひょっこりと顔を出し、元気よく挨拶する様。
魚人という存在に怯えながらも、なんとか近寄ろうと歩み寄る様。
年のころはあの子より小さいだろうか。
しゃがんで視線を合わせようとしても、まだ見下ろす形になってしまう。
友好の意を込めすっと手を差し出せば、もおずおずと手を差し出してきた。


「ぴゃっ、ちべたい」

「魚人ははじめてかの?」

「ぎょじん?」


ちらりと一番隊隊長を振り返り、おそらく魚人とはなんだと目で問うているのだろう。
その信頼関係が、在りし日の頭とあの子に重なる。
足元に戻ってきたを抱き上げ、魚人とはなんだと説明を聞かされている。
折っていた膝を伸ばして立ち上がると、説明を聞き終えたの視線が、怯えから好奇心に変わっていた。


「ジンベエは、はんぶんさかな?」

「おおそうじゃ。半分が人間半分が魚という相の子じゃな」

「じゃあ、はんぶんはたべれる?」


きらきらと輝いた目で尋ねられ、一瞬呆けてしまったもののすぐに大笑いしてしまった。
は一番隊隊長にこのアホ!と殴られ、なぜ殴るのか!と抗議している。
その様がおもしろくて、笑い声がさらに大きくなるのを自分で感じた。
笑いながらなんとか息を整え、ぶーたれてしまった子供を見る。


「お前さん、と言ったか」

だよ!」

「今、幸せか?」


数年前、タイの頭とアーロン、他大勢の仲間と一緒だった頃。
コアラという少女と旅をした。
彼女との別れは、頭との死別を思い出させる。
彼女は今、幸せだろうか。


「まいにち、たのしいよっ!」


満面の笑みが、重なる。






  
コアラちゃんが好きです。
2012/06/24