お子さま行進曲



「帰れねぇよ」

、お前は帰れねぇ」


白ひげが言うと、は再び泣きだした。
先ほどの男に取り押さえられた時の怒りとは違い、突然の宣告への戸惑いの涙だった。
喚くことはせず、ただうぅうと唇をかみ締める。


は、かえる、よ?」

「どうやって?」

「およい、で」

「いつまで泳ぎ続けられる。溺れ死ぬのがうちだ」

「お、およげるもん!、がんばるもん!!」


本当は泳ぎきれないことがにもわかっていた。
どこまで見ても、何の影も見えないほどに広がる水たまり。
果てがあるのか。もしかしたら、この先陸地なんてないかのように錯覚してしまうほど広い、うみ。
ただ、現実を受け入れたくなかった。
気づけば知らない場所にいて、自分の仕事場であり家である城に帰れない。

全てが突然すぎた。
の頭の容量を、とっくに超えていた。
の幼い頭では、理解も納得も出来なかった、受け入れられなかった。

それでも必死に考える。
自分の立場を、必死に考える。


「っ、、はっ!」

「おう」

「かえれ、ないの?」


「そうだ」


口に出すと、ますます現実が重くのしかかった。
はエドワードの目を見る。
短いやりとりだけど、エドワードは信頼するに足る人物だとは子供ながらに感じていた。
そのエドワードが、自ら呟いた言葉を肯定してしまった。
帰れないという言葉を、そうだ、と肯定されてしまった。
あぁ、と再び涙がこみ上げる。


、おしろに、かえれないっ!!!」






  
2010/09/16