お子さま行進曲



「おわー、久々の街だー!!!」


その日は1日オフだった。
モビー・ディック号は大きな街のある島に上陸している。
久々の地面に船員たちは意気揚々と街へくりだしていた。
も例外ではなく、船の見張りや居残りに当たらなかったので、わくわくしながら船を降りた。
何もない海と違って景色がめまぐるしく変わるのが楽しい。


「うおー、このナイフとフォークでご飯食べたいっ!」

「これ買って帰ったらサッチなんか作ってくれるかな?」

「お花もいいなぁ!!」


街を歩きながら、店を覘く。
可愛い雑貨や面白い何かがショーウィンドウの中に溢れている。
の部屋はいつも散らかっていてマルコに片付けろと怒られるので、あまり物を買わないようにしている。
それでも、ショーウィンドウのガラス越しに様々な物がに買ってとうったえた。
うぅぅ、と唸りながら、可愛い小物から目をそらし、買うのをこらえる。
手持ちの無さとマルコに怒られることを考えたら、我慢我慢。

くん、との鼻が美味しそうな匂いをキャッチした。
辺りを見回すと丁度昼時らしく、露店から客引きの声が上がっている。
良い匂いが立ちこめ、もつられて出店の前に並んだ。
肉とチーズのたっぷり挟まったサンドイッチを頬張る。もちろんちゃんと買ったものだ。
食べながら、またゆっくりと街を歩く。

平和で平凡で平穏な町だった。
1日をかけてゆっくり歩いて、街どころか島全体を見て回っていたらいつの間にか日が暮れていた。
数日停泊すると言っていたので、夜は船に戻っても街に泊まってもかまわないというのが白ひげ海賊団のルールだ。
無駄遣いの多いだが、与えられている稼ぎが多いため余裕がある。
けれども船の自室があるので外泊はあまりしない。
帰ろう、と港を目指そうとした時だった。


遠くだった。

暗がりだった。

でもあれは。


*


「ただいま」

「いや、ここ俺の部屋だし」


エースのツッコミを無視し、はエースのベットに直立のまま倒れ込んだ。
ばふっと布団が埃を立て、スプリングがきしむ。
動かないを不審に思いながら、エースはそろそろとに近づいた。
うつ伏せになっているので、表情はうかがえない。


「どうした、腹でも減ったのか」

「んー、むしろ胸がいっぱい」

「胸ェ?お前なんもねぇじゃん」

「………エースはバカだから」

「バカだからわかんねぇって!?」


はそれ以上エースと言い合うことをせず、枕に顔を埋める。


「エース、今日、ここで寝ていい?」

「なんかあったか?」

「わかんない」


枕から顔をあげないので、の声はくぐもっていた。
エースはが寝そべっている横に腰をおろし、動かない彼女を見た。
見たところ怪我はない。
空腹ではないと言っていたので、それは信じることにしよう。
なら、病気か。
首筋に手を当ててみたが、己の能力の所為で体温はわからない。
脈を測ると特に早いわけでもない。


「腹でもイテェのか?」

「ううん、どこも痛くないよ」

「誰かにいじめられたとか?」

「街の人はいい人たちだった」


眠いだけ、なのだろうか。
それにしては元気がないように感じる。
いつも元気いっぱいななだけに、どこか心配だ。
明日になると、どうせけろっとしているのだろうけど。
喧嘩の相方がいないと、エースの調子も出ない。
こんな時どうしたらいいのかわからないけれど、記憶の糸を手繰り寄せ、かつて弟にしていたように頭を撫でた。


「ベットは貸してやる。貸しイチな」

「うん」

「早く元気出せよ」

「………うん」


が返事をしたのを聞いて、エースは部屋を出た。






 
Another side
2010/09/25