
お子さま行進曲
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ノックは形だけだ。 だって用事があってきているのだし、短くない付き合いのうち入るなと言われたことはない。 答えがわかりきっているのに、返事を待つ時間が手持無沙汰だ。 だから、ノックと同時に声をかけ、ドアノブを開くのが常だった。 はぁ、と艶っぽいため息が聞こえた。 目を閉じたままマルコにしなだれかかるの上半身は、ほとんど脱がされていて裸に近い。 高揚して赤い頬と、汗かそれ以外のものか首筋や鎖骨辺りが濡れたように光っている。 こちらに気づいていないのか、マルコの素肌にべったりとくっつくはまさに情事の真っ最中で。 そういえば、二人は長年の思いが実ったばかりの熱々新カップルじゃなかったか。 あぁ、のこんな姿は見たくなかったなァとサッチは思う。 サッチだってマルコと同じだけと一緒に居たのだ。 娘のような妹のようなのエロシーンなんて、遭遇したくなかった。 何も、ドアのすぐ横でやらなくてもいいじゃないか。やるならせめて、ベットでやってくれ。 ドアを開けたまま固まってしまったサッチは最初に目に入ったから漸く目線をずらし、を支えつつもその手は確実に腰から尻に掛けてゆるゆると撫でているマルコに目をやった。 マルコはさも邪魔だと言わんばかりの目でサッチを一瞥すると、の頬に触れていた手を離し、しっしと猫でも追い払うかのように手のひらを振った。 我にかえり、石化したかのように固まっていた足に力が戻ったのを確認すると、お邪魔しましたと回れ右をして立ち去ろうと思った。 思っただけで、まだ反応に移せていなかった。 がうっすらと目を開き、サッチを捕らえる。目が合った。 さきほどまでどこか恍惚とした表情を浮かべていたの顔がくしゃりと歪む。 眉はハの字に下がり、潤んでいた瞳は湿度を増し、顔は更に朱に染まる。 甘い含みが消えないまま吐き出された声は、静かな部屋によく響いた。 「さっち、見たら、いやぁ」 羞恥に震えながら絞り出された、舌ったらずな声のなんと扇情的な事か。 恥ずかしそうに、切なそうに顔を歪めながら懇願する姿に、再び足が固まった。 のえろい姿なんて、想像しようにもできないほどだったのに。 これは正直、クる。 うわぁ、と固まっていたら、どんと胸を押された。 を支えたまま半歩だけドアへ近づいてきたマルコに、部屋から押し出された。 「こっから先は有料だよい」 まぁ、幾ら詰まれても見せる気はねぇけどな。 最後にそう聞こえて、ドアは閉められた。 友人の変化に、可愛かった子供の変化に、時の流れを感じつつ、これ以後はちゃんとノックをして、返事を聞いてから入る必要があるなァとサッチはため息をついた。 ← □ → 2011/01/24 |