■顧問の先生?いや、違います、こんな顔でも副部長です、生徒です
「魔女っ子参上、どうぞよしなに」
ぴきゅりーん☆
立海テニス部、レギュラー専用の部室のドアをがちゃりと開け、徒歩で侵入してきた女子。
此処はテニス部の部室なので、部外者の出入りは厳禁。
なので例に違わず、この女子にも出て行ってもらおう。
そういえば、この女子の格好を気にするわけではないのだが一般人にはあまり見られない様な格好をしているな。
そうだな、強いて言うのならば邪魔なほど大きく黒い帽子をかぶり、無意味な長い布を羽織り、その下には何処の学校かは判らないがセーラー服を着ており、武器とも玩具ともとれる杖を持っている、と言う格好だ。
俺はファッションなどに興味が無いので詳しいことはわからないのだが、この女子の格好が一般的でないのはわかった。
「貴方の願いを1つ、なんでも叶えて差し上げます。 さぁ、どうぞ」
俺の言葉を無視して話を進める女子。
なんだ、俺は試されているのか?
「ふん、そんな戯言に俺は惑わされないぞ。 早く出て行くがいい!」
「まぁまぁ、そんなことおっしゃらず。 願い事はありませんか? どんな些細な願い事でもお任せください」
ふん、願いは他人に叶えてもらうものではない、己自身で叶えるものだ!!
「たとえば現実に叶いそうにない願いでも叶えて見せます。 他人の不幸を望んだり、もしくは幸せを望んだり」
「他人の・・・?」
「はい。 何も自分のためだけに願い事をつかわなくともいいのです」
他人、他の人の願い事。
それはもしかして、
「幸村のことを、言っているのか?」
「さぁ、わたくしには何のことかわかりかねますね」
微笑む女子。
そうだな、外部の女子に幸村のことがわかるはずがないな。
それにしても、そうか。
幸村の回復を願わずして俺は何を願う。
あいつの復活こそが俺の願いではないか。
「では願おう、幸村の復活を」
「幸村精市さんの復活をご希望されますか?」
「あぁ」
そういえば、俺は何故見知らぬ女子に斯様な願いを言っているのだろう。
追い出すのではなかったのか。
いかんな、たるんどる。
「ですって、精市さん」
「ふふ、いい下僕・・・じゃなかった、いい副部長を持ったなぁ」
「ゆゆ、ゆ、幸村!?」
「ちゃんと俺の代わりやってくれてる? 真田」
「い、いや、それよりも何故此処に!?」
「丁度いいとこで呼び出してくれたね、。 暇だったんだ」
「事前にメールを下さったおかげです」
なんだ、何が起こっているのだ!
幸村が突然現れたぞ!?
入院中ではなかったのか?
そもそもこの女子は幸村と知り合いだったのか!?
「あはは、真田眉間にしわよってて40代後半に見えるよー」
「ゆ、幸村も、元気そうで何よりだ!」
「うん、元気元気ー。 やっぱりいつ見ても真田は面白いなぁ。 ねぇ、そう思わない、」
「なんてゆーか、幸村さん生き生きしてますね」
「ふふっ、そうかな?」
その後幸村は始終笑顔で部活の様子など聞いたり、俺に活を入れたりしてまた病院に帰っていった。
それと同時に女子もまた奇怪な ぴきゅりーん☆ という音を出して、ようやく部室から出て行った。
本当に、なんだったんだ。
しかし、幸村が元気だったからよしとしよう。
なんだか深く考えてはいけないような気がするからな。
真田弦一郎 2007 06 10
