■お母さんみたいな苦労人
「魔女っ子登場☆ 貴方の願いはなんですか?」
ピロリロリン。
あー、大分疲れが溜まっているみたいだ。
きっとそうだ、最近英二とダブルスの練習をしていたり、部活で大変だったからな。
まさか自分の目の前に大きくて黒い三角帽子を被って黒いマントを羽織ってお決まりの杖を持ったセーラー服のいかにも魔女っ子です、って感じの女の子が何も無い所から突然現れるなんて、疲れているから目の錯覚に違いない。 いや、そうに決まってる。
「現実逃避タイプですね、ご安心ください。 わたくしは本物の魔女っ子です」
「いやいやいやいやいや、あの、貴女はどちら様ですか?」
「見た目どおり魔女っ子です。 貴方の願いを叶えて差し上げます。 さぁ、どうぞ」
これは幻だ、幻想だ、妄想だ。
そうだ、きっとこれは夢なんだ。 疲れてるから、ついうたたねでもしてしまったんだ。
「まぁ、存在を認めてくださらなくとも結構ですが、願い事だけは言って下さい」
「は、はは」
一体どう反応したらいいんだ、俺は今、自分の幻に話しかけられているぞ。
こういう場合はやっぱり話をしておいたほうがいいのか? それとも無視したほうがいいのか?
いや、でも無視は流石に可哀想だし・・・。
「あの、今日は良い天気ですね」
「はい、そうですね。 で、願い事は決まりましたか?」
「願い事なんて急に言われても・・・」
「お年頃の男の子です、願い事の1つや2つくらいあるでしょう」
言われても、なぁ・・・。 それに幻に言った所でどうなるわけでもなし。
願い・・・か。
「今はゆっくり休みたいな。 でも、部活の皆には迷惑かけられないから休めないけどな」
はは、幻相手に何言ってんだか。
苦笑いしながら魔女っ子(?)の方を見るとにっこり微笑みながらこちらを見ていた。
「任せてください、お安い御用です。 さぁ、この扉の向こうへどうぞ、お好きなだけおくつろぎください。 もう十分休んだと思えばまた同じ扉から出てきてください。 時間の事は気にせずどうぞ、精神と時の部屋ですのでたっぷり1ヶ月休んでもこちらでは5分程度しか経過しませんので。 あ、でも重力とか昼と夜の気温差とかはありませんよ?
快適にお過ごしいただけるよう改良しておきました」
精神と時の部屋・・・ドラゴンボールだな。 っていうか、それって魔法じゃなくないか?
まぁ、妄想に一々つっこむのもアレだし、幻想に付き合おうとするかな。
どうせ眠ってるんだし、いざとなったら親だとか英二とか起してくれるだろう。
それまで、幻に甘えさせてもらうとするか・・・。
休める、と身体が判断した瞬間襲ってくる睡魔。
ピロリロリン。 と機械的な効果音がしたが、もう半分眠りかけていた俺には遠い音に聞こえた。
*
「おーい、大石! 起っきろー」
案の定、俺は眠っていたらしい。
目を開ければ英二が居た。
「あぁ、すまない。 やっぱり眠ってしまっていたのか」
「うんにゃー。 屋上に遊びに来て見れば珍しく大石が眠ってたからさー」
「そうか」
「あ、大石嬉しそう! なになに? なにかイイコトあったのー?」
「・・・、あぁ、面白い夢を見たんだ」
魔女っ子が現れて、願いを叶えてくれる夢をな。
・・・、そういえば、身体が軽くなった。 久しぶりに寝たからかな?
大石 秀一郎 2006 06 11
