■データ命の逆光眼鏡
「箒に乗って魔女っ子参上☆ 貴方の願いはなんですか?」
ピロリロリン。
俺の目の前に突如として現れた自称魔女っ子。
困った、どう反応したら良いのか判らない。
こんなのデータにない。 (いや、データがないのが普通だと思う)
確かに黒いマントに黒い帽子にステッキに、定番の魔女っ子スタイルだ。
しかしながらこの平成のご時世に魔女っ子なんているのだろうか。
いやいや、なにも頭ごなしに否定していてはいけないな。
ここは一つ、彼女を魔女っ子と信じてみようじゃないか。
「やぁ、はじめまして魔女っ子さん」
「はい、はじめまして、貴方の願いを一つだけ叶えて差し上げます」
「どうして俺なのかな?」
「自分が選ばれた人間か何かだと驕っていませんか? 勘違いしないでください、ランダムで偶然選ばれただけです」
辛口だな、魔女っ子は。
これは中々いいデータが取れそうだ。 (魔女っ子だとしても、単に魔女っ子のコスプレをしている変な女の子だとしても)
「俺の名前は乾貞治、魔女っ子さんの名前は?」
「」
「見たところセーラー服を着ているようだが、通っている学校は? ちなみに俺は青春学園の中学3年だ」
「某学校の魔法科6年生」
なんだ、聞けば意外と素直に答えてくれるじゃないか。
魔女っ子っていうと秘密主義者みたいな先入観があったのだが、どうやら違うみたいだな。
か・・・、これもデータに追加しておこう。
「あの、わたくし暇人じゃないのでさっさと願い事を言ってくださいませんか?」
「あぁ、すまない。 データマンなものでね、性分という奴なんだ」
「それは先ほどまでの会話で十分判りました。 願い事は?」
いい加減単調な質問に飽きてきたのか、それとも本当に暇じゃないのか、さんは俺が願い事を言うのを急かして来た。
困ったな、実はまだ俺は彼女が本物の魔女っ子かどうかはっきりと判断できたわけじゃない。
そこだけははっきりさせておきたい所なのだが、さてどうしたものか。
・・・そうだ、そうすれば良いのか。
「さん、願い事はどんな願いでも叶うのかい?」
「大抵のことは大丈夫です。 死者を蘇らす、半永久的な効果を持続する、願い事を増やす、等の定番の禁止項目がありますが」
「ふむ、それだったら大丈夫だな」
「はい、ですから願いをどうぞ」
「今、ここにテニスラケットとボールがある。 これらはいずれもガットが切れていたり毛羽立ってきたりしている、要するに使えないものだ。 どうだろう、これらを直してはくれないだろうか?」
「任せてください、お安い御用です」
実際に魔法を使わせてみたら早いじゃないか。
まぁ、在り来たりで少々インパクトに欠けるが、願い事は妥当なところだろう。
さぁ、魔法を使うところを見せてもらおうか・・・って、なんだ?
チャラリラッチャラー
このなんともマヌケな効果音やもしや、ドラえもんじゃないのか?
そしてその手に持たれているのはタイム風呂敷では?
もしや、それでラケットとテニスボールを新品に?
いやいやいや、それは魔法じゃなくて科学の力だろう!
慌ててツッコミを入れようとした俺を余所に、さんは願い事を叶えることができて満足したのか、現れたときと同じ
ピロリロリン。
という機械的な効果音を出してとっとと消えてしまった。
残ったのは俺と、新品に戻っているテニスラケットとテニスボール。
結局、魔法を使わなかった・・・よな?
ふむ、魔女っ子というからには魔法を使うと思っていたのだが、まさか科学を使うとは。
最近の魔女っ子も変わったものだ。
データ : 魔女っ子は実在するかもしれない。
しかし、魔法を実際に使用できるのかは未確認。
乾 貞治 2006 07 01
